からたちサロン13
「今、凛と輝く女性たち」対談余話
ピアニスト中村紘子
◇坂井茂樹(17期)

鰹、工中金経済研究所長

元「商工ジャーナル」
発行・編集人
坂井茂樹さん(17期、前二水高校同窓会関東支部長)は、有名な「商工ジャーナル」の発行・編集人をされた時、多くの著名人と直接対談されました。
とくに対談された凛と輝く女性たちの印象やとっておきの話を、本サロンで語っていただくことになりました。 第1回はピアニストの中村紘子さん。
(サロンマスター 高田敬輔)


対談趣旨
 戦後60年余、ひたすら高度経済成長を追求し、世界に類例のないスピードで物的繁栄をみた。然しバブルの崩壊後20年余「失われた10年または20年」ともいわれるなか、物質的に失われたもの以上に精神的に多くのものを失い自信をなくしているような気がしてならない。今、凛と輝く生き方を追求してみたいとの考えのもと内外で信念をもって活躍されておられる芸術家を中心に生の言葉を聞いてみた。先ずは戦後ピアノ界で常に「日本人初」の形容詞を冠しトップで歩んでこられた中村紘子さんに人間の魂の糧ともなる音楽の玄奥を語ってもらった。音楽的感動は人と人との調和を考えるうえで大いに有用であるといわれる。音楽を通じ今一度魂に感動を求めたい。

◆対談余話
ピアニストであり大宅壮一ノンフクション賞「作家」でもある中村紘子さん
 中村紘子さんと初めてお会いしたのは、私の職場有志で開催したミニコンサートにご主人〈庄司薫さん、「赤頭巾ちゃん気をつけて」で第61回芥川賞受賞〉と共に来てくだされた2001年6月のある夕刻のことである。
 ベートーベンの「熱情」を「あら、このピアノの鍵盤子供のおもちゃのようだわ」とあの大きな黒い瞳をくるくる廻し、当方として唯一誇れると思っていたスタインウェイのピアノの鍵盤を力強い両手で壊れんばかりに演奏してくださったのだった。
 急ごしらえの男声合唱団が歌った多田武彦作曲の組曲「雨」に、ご夫妻はやんやの喝采をされ、その後の懇親会の席上でも「最近世の中に男性の歌い手が少ないと思ったらこの企業に囲われていたのね」と大いに持ち上げ(?)てくださった。
 私はこのときの「あけぼのコンサートにて」とご主人と共にサインして下さった書籍2冊を大切に保存していたのである。
 その時から5年経った2006年11月、このスーパーレディにインタビューする機会を得た。
 「今ここの場で演奏してくださいと言われても出来るようにコンディションを保つには、私の場合は毎日2時間くらい弾いているのよ」と  今も毎日練習を欠かさない特大のグランドピアノが2台据えられたご自宅でのインタビューだった。
 5年前のミニコンサートでの出会いを覚えて下さっており、まことに親しく丁寧にそして茶目っ気な黒い瞳で応えてくださった。
 3歳からピアノを始められてから、戦後のピアノ界でトップを走り続け今も3日おきくらいに演奏会のスケジュールをこなす精神的、肉体的な強靭さには敬服の至りにも「いえいえ、全部が戦後で一からスタートというそういう時期と重なったものですから」と。
 「それは非常に単純で、音楽が好きだからですよね。あとは一にも二にも体力、ピアノを弾くというのは、肉体労働なものですから、筋肉の状態がいいと、いい演奏が出来る、それが如実に表われます。日本人、特に女性は柄が小さいですね。ピアノという楽器は、矢張りロシアの熊みたいに大きい男性の使用に耐えるようにできているものですから、ゴルフと違って、ハンディもありませんし」と笑ってご自分の両腕を見せてくださる。
 「脳生理学的に言うと、スポーツと音楽は一番早熟な分野ということが科学的にも立証されてきているので、余計早熟な分野は若い人にやらせるようになっています」とご自分が16歳でN響の世界一周公演ソリストに抜擢されたことにも気負いなく語られる。
 「むしろ一等を取らなかった人の方が何十年も経って活躍しているケースが多いんです。才能があることと、それを持続させていくこととは、またちょっと違って、キャリアを断念せざるを得ない友達もずいぶんいました」
 「怪我したから今日はごめんなさい、下手よとは言えないんですよ。いかなる時もベストをみんなは求めているので、自分の体、コンディションは自分で守るしかない」とご自分の身に沁みた事柄を吐露してくださった。
 三十年近く前に車の免許を取ったときにも周囲の方が心配されるから夜目にも目立ち、かすっても直すのに楽で一番頑丈な白色のベンツを買い、演奏会のときでも、片道2時間くらいの道のりだったらご自分で運転して行かれるという。これはオフレコよと世界のスーパーレディ・ピアニスト中村紘子さんは人間味溢れる多くのお話を黒い瞳を輝かせながら語ってくださった。
 
 中村紘子オフィシャルサイト
 http://nakamurahiroko.com/index.html


写真は商工ジャーナル(2006年11月号)に掲載された「今を語る 魂の糧となる音楽を求めて」記事と中村紘子さんプロフィール (提供;商工ジャーナル)

◇プロフィール
 鳴和中学―二水高校(17期)−金沢大学法文学部卒、昭和44年商工中金入庫。商工中金理事。(株)日本商工経済研究所代表取締役社長等歴任。現在(株)商工中金経済研究所取締役所長。石川県中小企業団体中央会特認講師、金沢大学客員教授、金沢大学イノベーション創成センター研究員等、昨年金沢に居を移す。
 専門分野「中小企業金融実務論」 鰹、工中金経済研究所時代、中小企業実務総合雑誌の月刊誌「商工ジャーナル」の発行・編集人としてわが国の著名経営者が語る「私の経営学」、芸術家との対談小冊子「今、凛と輝く女性たち」など経営者向けに多くの実務書の刊行を行うなか、全国の中小企業経営者の勉強会に講師として招聘され、企業経営に感性の豊かさの必要性を語り続けている。


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